人をダメにするソファというコンセプトがウケた謎を解いてみる

コンセプトワーク

突然ですが、皆さん、これ、なんだかわかりますか?、、、

ショールームで寝そべったり、座ったことは皆さん一度はあるはず。脳内は、おおおおーーー!包まれて気持てぃイィー!!ですよね。

これが今大人気の!! “人をダメにするソファー”です。なぜ、人をダメにするのに売れるのか?私たちはできる大人になりたいのではないのか?実は、それは表面的な話で、太宰治のごとくどうせオレダメだもんと憂さぶれていたいと言うのだろうか。

なぜ人をダメにするソファーが売れたのか、コンセプトワークの観点から考えてみました。

ヒトをダメにするソファーが売れたきっかけはコトバだった

このソファの原型とも言えるビーズクッション型椅子が生まれたのは、なんと50年も前の1968年に、イタリアのザノッタ社から“Sacco”という椅子が誕生したのが始まりとされています。当時椅子の概念を変えたとして表彰され、世界的な美術館のコレクションにもなっています。

ビーズクッション型 イス Sacco 
出典:wikipedia

このビーズクッション型イスですが、日本では無印良品から「体にフィットするソファ」という商品が2002年に発売されたのですが、なかなか爆発的なヒットにはたどり着けなかったようです。

しかし発売から10年経った頃、あるブログをきっかけにして一気に広まりました。
そのブログ主は、「何この人をダメにするソファーっ!て、気持ちよすぎてやばいよだめになれるよ!」とコメント、そのコトバに大勢の人が「わかるううーーーーー!!」と感化されたのです。
コトバの影響力って、凄まじいですね。

需要と共に姿を変えるイス

なぜわたしたちはヒトをダメにするソファ、に共感できたのでしょうか?椅子の歴史からさかのぼって考えてみたいと思います。

現存する最古の椅子はなんと、古代エジプト時代(前2686年〜前2181年)に発見されています。例えばこちらのイスは当時のイスのレプリカですが、形は現代の椅子と遜色がなく、立派な装飾が施されたものでした。

エジプト第18王朝Sitamun王子の椅子のレプリカ
出典:wikipedia

古代の人類は椅子に何を求めたのでしょうか。一つは日常的に私達が行う、“座る”という動作です。私達人類は大地に生まれ、“立つ”、“寝る”だけではなく、“座る”という動作を発明しました。

これまでの歴史の中で、芸術家たちがアダムとイブを描くとき、人間として堕落する前、自分たちは楽園でこうして立っていたのだといわんばかりに、ふたりの立位の姿勢を紹介するのが常だった。立位は座位と比べて多くの点で健康によい。これは、身体をまっすぐに立てた、幼少の頃から身につけた自然の姿勢である。これに対して、座位は社会的な行動を通じて後で身につけられたものだ。

フローレンス・ド・ダンピエール「椅子の文化図鑑」より引用

単に休むだけであれば、座る必要はなく、寝れば良いのです。活動するときは立てばよいのです。なぜ座る必要があるのでしょうか。

立つより、歩くより、手を使って作業する時間が増えた。あるいは、ゆっくり会話する時間が増え、体を休めつつヒトと向かい合う時間が増えたから。だとすると、古代から椅子はとても重要な役割を果たしてきたことになります。

もう一つ椅子に求められてきたことは、権力や富の象徴としての椅子です。

ジメジメした床に座る庶民に対して、権力者は椅子の上でくつろぐ事ができました。くつろぐという機能だけではなく、どれだけ太ってもゆったり座れそうな大きな椅子、天井に届きそうな高い背もたれ、フェラーリよりも高級な金の装飾が施された玉座など、古代から西洋東洋問わず、椅子は権力者の象徴でした。

スリランカ、シンハリ人地域の君主、キャンディ王国の玉座
出典:wikipedia

世界大百科事典第2版によれば、ソファは17世紀後半にフランスで使用され始め、やはり王侯貴族の権力と富の象徴として利用されていました。

フォンテーヌブロー宮殿 イスとソファ wikipediaより引用


権力の象徴としての椅子はフランス革命によりピークを終え、19世紀ころからは権力者の椅子は庶民に開放され、ゲストが座ることが当たり前の習慣となっていきます。
ホテルのラウンジや、応接の文化はこの頃から出来上がったようです。日本へ椅子文化が渡ってきたのも明治維新の文明開化の頃でした。

新宿のホテルラウンジ


戦後、マニファクチュールの大量生産大量消費の流れから、優れたデザインのミニマムデザインの椅子が数多く考案されました。デンマークのハンス・J・ウェグナーのYチェアもこの当時に生み出されました。ソファーでは、今でもテレビでよく見かけるあの上野の美術館をデザインした建築家、ル・コルビジェのソファー LC2が誕生しています。

ハンス・J・ウェグナーのYチェア 出典:wikipedia
ル・コルビジェのLC2ソファ 出典:wikipedia

その後、高度情報化社会を迎え、飛躍的に事務作業が増大します。その事務作業の負担を少しでも軽減できるよう、高さを調整できる事務用の椅子が数多く普及します。これが、現代のオフィスチェアにつながる流れです。

私が使っているオフィスチェア

日本に目を転じると、日本では戦後、リビングルームが登場し、高度成長を経た1980年代から、家庭用のソファーが定着してきました。外では24時間働けますか?の世界でバリバリ働き、家に帰るとソファでの家族の団らんがありました。

そしてバブルが崩壊からの失われた30年に突入していきます。その間、癒やしブームが到来します。たれパンダやリラックマなどの癒やし系キャラが登場し、快眠を求めるための低反発枕や高機能ベッドがヒットしました。


そんな時代を経て満を持して登場したのが癒やし系ソファーです。王侯貴族のような富の象徴と真逆で、ゴロンとだらしなく、パジャマ姿でポテチを貪る姿がぴったりなイスの出来上がりです。
つまり、現代人が求める究極ソファーが人をダメにするソファーなんです!!

人をダメにするソファのコンセプトのつくりかた

人をダメにするソファというコンセプトは
座るという発明から始まり
 ↓
古代・中世、富と権威の象徴としての玉座・ソファー
 ↓
庶民に開放された応接椅子・ソファー
 ↓
仕事頑張るマンが守るべき家庭の象徴としての家庭の団らんソファー
 ↓
仕事頑張るマンが頑張理過ぎて辛くなってきた時代に必要とされた癒やしソファー
というプロセスを経て作られたということです。

いやーー、、、みんな辛いね!辛い時代を頑張って生きているよ!いつまでも明けない冬。春よ遠き春はるよ。瞼閉じてもやってこない春よ。じゃあ、今日もうずもれよう。

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