蔭山ゼミの概要
開催日:2024年3月10日(日)
東洋の思想において非常に重要な存在である三島由紀夫は、作品の中でセクシュアリティや人間の欲望について学ぶことができます。
また、バタイユの理論も含めて議論することができるため、多角的に人間の欲望について学びを深めました。
今回の課題図書:『新版 三島由紀夫が復活する』- 小室直樹
社会学者 小室直樹が三島由紀夫の思想や行動を分析し、現代社会と照らし合わせながら論じた一冊。
(参考)『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』 – 橋本治
(参考)『三島由紀夫論』- 平野啓一郎
三島由紀夫を学ぶために重要な「唯識論」
三島由紀夫の作品や言動には、唯識論の影響が現れています。唯識論とは仏教の概念で、「全てのものは心の中にある幻想」という考え方です。
八識
八識とは、眼識、耳識、鼻識、舌識、身識、意識、末那識、阿頼耶識の八つの識を指し、これらが互いに影響し合いながら、私たちが外界と自分自身を認識することを可能にします。
末那識(まなしき)
末那識(まなしき)は、他の識から得た情報を基に自分という意識を作り出し、自他を区別する役割を持っています。
しかし、唯識論において、目に見えている末那識は固定的で実体的ではなく、常に変化し続けると考えられています。
阿頼耶識(あらやしき)
阿頼耶識(あらやしき)は、心の奥底にある根本的な意識です。
これは、過去から現在までのどんな些細な経験や意識されていない領域を含めた全ての経験が記憶されており、それが現在の私たちの認識や世界に影響を与えています。
空(くう)
唯識論の目的は、空(くう)の境地に至ることです。
空とは、すべてのものが固定的実体を持たないという概念です。
炎や波のように一瞬たりとも同じ状態ではなく、独立して存在しないとされます。「空」の悟りを目指すことで、執着や煩悩から解放されるとされています。
また、蔭山ゼミでは以下のような討論も繰り広げられました。
- 『仮面の告白』の解説(同性愛がテーマの、性と死を描いた作品)
- 三島由紀夫の自決の意味
三島由紀夫が自分の世界に耽溺したのか、社会変革を起こそうとしたのか。これは、右翼から見るのか、左翼から見るのかで捉え方が変わる。 - 二・二六事件
二・二六事件は、1931満州事変の直後、1936年に起こったクーデター未遂事件です。
当時、天皇は「これは朕の戦争ではない」と述べており、天皇自身が望まない戦争にもかかわらず、軍隊派遣の命令が出されました。
この状況に対する不満から、陸軍内の若手将校たちが政府や軍の上層部に対して反発し、クーデターを起こしました。
事件の背景には、二つの派閥の対立がありました。
・皇道派:主に農村出身の将校たちで構成され、天皇中心の政治を目指す。
・統制派:都市のエリート層が中心で、より現実的な政策を支持。
多くの一般市民は、青年将校たちに同情的でした。彼らの行動が、腐敗した政治への抗議と見なされたためです。しかし、この事件は天皇の怒りを買うことになり、反乱軍に退却を命じました。この天皇の一喝により、事件は収束に向かいました。
参加者の感想
- 三島は太平洋戦争中、出征を逃れ、多くの同世代が戦地で命を落とす中、彼は東京帝国大学で文学を学び続けることができた。この経験が、「美しい死」の憧れとこだわりに影響したのかなと思った。
- 1920年代の日本社会における同性愛、また妻子がいるのにも関わらずの自決、理解できないことばかりだけど、バタイユを通して考えると、わかりやすいと思った。
まとめ
三島由紀夫の議題は、仏教の唯識論やセクシャリティまで多岐に広げて議論が広がり、現代の問題を絡めた議論を展開することができました。
蔭山ゼミでは、2,3ヶ月に一度リベラルアーツを学んでいます。開催数は、2024年7月現在、開催回数は107回を超え、毎回約20名の参加者がいらっしゃいます。
開催場所は新宿ですが、オンライン参加も可能です。
回ごとに異なるリベラルアーツのテーマを設定し、課題図書を事前に提示しています。講義とディスカッションを交えて学んでいます。課題図書は読めなくても、完読しなくても、気軽に参加可能です。むしろ、参加することで、楽しみながら学べます。
蔭山ゼミは、スピーチライターゼミ(SWS)のメンバーを優先してご案内しています。SWSのメンバーで満席になってしまうことが多いので、ご興味のある方は、SWSへのご参加をお勧めしております。SWSのメンバーになると、蔭山ゼミの他にもスピーチやライティングなど、幅広く学ぶことができます。(詳しくはこちらから。)
蔭山ゼミ、SWSの詳細や参加方法についてご質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください。お待ちしております。
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