ケンシロウ、オバマ、キング牧師の「決めゼリフ」の作り方

シナリオライティング

運命を切り開く男がいる。天に背く男がいる。それは北斗神拳二千年の宿命。見よ! 今、その永き血の歴史に終止符が打たれる。

乱世に終止符を打った。歪んだ正義に鉄槌を食らわせた。そして、ケンシロウ、オバマ、キング牧師は決めゼリフを残した。

果たして!彼らはどのような決めゼリフを残したと言うのか!?

「お前はもう死んでいる」ケンシロウの決めゼリフ

ご存じの方も多いと思われる、北斗の拳の主人公、ケンシロウの決めゼリフです。なぜ「お前はもう死んでいる」という決めゼリフは、当時の少年たちの心を震わせたのでしょうか?

ケンシロウは荒廃した世紀末に、各地で虐げられている弱い者たちを助けながら旅をしていました。

荒廃した世紀末では、悪事の限りを尽くし、暴力で弱いものを支配し、ヒャッハー!とモヒカン頭で浮かれまくる悪党共が、我が物顔でのさばっています。

この悪党共に、なんてひどい奴等なんだ!やっつけたい!と、私たちは怒りを感じます。自分たちの中にある正義が、メラメラと燃え上がります。でも私たちでは、悪党を成敗することが出来ません。

そこに現れた、正義の味方ケンシロウは、悪党に一撃を加えます。
しかし、悪党は効いているそぶりを見せず、「大したことないじゃないか」とヘラヘラしています。

そこでケンシロウはこう相手に言い放ちます。

「お前はもう死んでいる」

その瞬間に、悪党共の顔は歪み、破裂して死んでいき、悪党は成敗されます。

そして私たちは「かっこいい~」と、気持ちよくなるのです。

この流れ、水戸黄門なんかも同じで、悪いやつを圧倒的な力と権力で懲らしめる、勧善懲悪のお話しなんですね。

水戸黄門的 勧善懲悪の黄金パターンを、何度も何度も繰り返されているのが、北斗の拳です。

ケンシロウとオバマの秘儀、アンカー&トリガー

何度もこのパターンを見ている内に、「お前はもう死んでいる」を聞くだけで、胸が熱くなるようになります。

さほど強い敵と戦って倒したわけでなくても、このセリフを聞くだけで楽しくなるし、このセリフを聞きたいと待ち望むようになります。いつしか、「お前はもう死んでいる」を聞くだけで、興奮を覚えるようになります。

これが、アンカーとトリガーと呼ばれる関係です。

この「お前はもう死んでいる」トリガーで、「かっこいい~」という興奮がアンカーです。

同じアンカーとトリガーの関係を持った言葉に、オバマ前大統領の「YES WE CAN」があります。

オバマ前大統領は選挙期間中に、「YES WE CAN」をスローガンにしていました。人前に出てスピーチをする際には、演台に「YES WE CAN」と掲げ、自身の後ろにいる支援者は、ミュージシャンのコンサートのように「YES WE CAN」とプリントされたタオルをかざしていました。

視覚的に「YES WE CAN」を印象付けたうえで、スピーチの締めくくりにも「YES WE CAN」と言って、観衆は興奮を覚え、各州での選挙演説を終えています。

事あるごとに「YES WE CAN」というトリガーに、興奮というアンカー引っ掛け続けたオバマ前大統領は、締めの2008年11月4日に行った大統領選勝利演説で、熱を帯びてきた終盤に「YES WE CAN」を繰り返し使いました。

「YES WE CAN」を聞く度に、聴衆に興奮を繰り返し思い出し、熱狂させて、この2008年のスピーチは、歴史に残るスピーチとなったのです。

歪んだ正義にグーパンチ!キング牧師の決めゼリフ

次に取り上げたいのは、1950年代から60年代にかけて、アメリカで黒人の人種差別撤廃を訴えた、キング牧師です。

キング牧師の有名な決めゼリフが「I Have a Dream」(私には夢がある)でしょう。

私には夢がある。いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の子孫たちとかつての奴隷所有者の子孫たちが、兄弟の間柄として同じテーブルにつくという夢が。

私には夢がある。いつの日か、不公平と抑圧という灼熱の炎にさらされているミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスへと生まれ変わるという夢が。

私には夢がある。いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色ではなく、人格の中身によって評価される国で暮らすという夢が。

今日、私には夢がある!

なぜキング牧師の「I Have a dream」は、強力な決めゼリフとして残っているのでしょうか。

南北戦争から1世紀余り、奴隷解放宣言を成されても、黒人たちはしいたげられ続けてきました。

1950年代、60年代のアメリカでは、白人と黒人でバスの座席が決まっていたり、水飲み場が分かれていたり、入れるお店や学校も分かれていました。

州によっては選挙権も無く、住むところも決められ、職業の自由はなく、黒人は白人に比べ、低賃金で働かされていました。

白人は黒人よりも優位である。それがアメリカ国内の歪んだ正義でした。

当時の黒人たち、いや今もそうかもしれませんが、こう思っているのではないでしょうか?

「私たちの祖先は、生まれ故郷から無理やりアメリカに連れてこられた。そして今なお、このような理不尽な扱いを受け続けなければならないのは何故だ!」

黒人たちの不満、怒り、哀しみ、苦しみはどれほどのものでしょうか?

計り知れない感情を抱えながら、じっと本当の解放を待ち望んで耐えていたのではないでしょうか。

そんな黒人たちの想いを、力強く代弁したのが、キング牧師です。

キング牧師のスピーチは、聖書や讃美歌などの一節から、黒人解放に繋がる言葉を引用して、白人社会のゆがんだ正義にグーパンチを食らわすパターンで構成されています。

定番の決め台詞を話した後に、中身をだらだら喋る。そしてまた決め台詞という構図です。

他のスピーチも見てみましょう。

1968年4月3日、キング牧師が暗殺される2日前のスピーチです。

われわれが国に言わねばならないことはたった一つです。

「自分がつくったルールを守れ!」ということです。

今回の違法な裁判所命令は、もしかして、ここが中国やソ連のような一党独裁の国ならば納得できるかもしれません。

合衆国修正憲法第一条にうたわれている基本的な自由が否定されるなんて、そういった権利を認めていない国家でなければ納得できないことです。

しかしどこかで私は読んだのです、「集会の自由」があることを。

どこかで私は読んだのです、「出版の自由」があることを。

どこかで私は読んだのです、「アメリカの偉大さは正義のために抗議する権利である」ことを。

犬を放たれても、放水をあびても、わたしたちの行進を止めることは出来ないように、

どんな裁判所命令でも、わたしたちの歩みを止めることは出来ません!

ほら、「どこかで私は読んだのです」という決めゼリフの後に、中身を話していますね。 

決めゼリフからのグーパンチで、そうだ!!と共感を得る。

また決めゼリフの後にグーパンチで、そうだそうだ!と共感を得る。

もう一回決めゼリフを言って盛り上がったら、グーパンチを入れて、そうだそうだそうだ!!と共感が増幅する。

何度もこのパターンのスピーチを続けることで、同じ決めゼリフが2度続いたら、「きたきた~!今日もスカッとするグーパンチを、歪んだ正義にお見舞いしてくれよ!!」と期待し共感するようになったのです。

ですが、「I Have a Dream」が他の決めゼリフよりずば抜けて有名になったのは、それだけではありません。

キング牧師の言葉の中で、「I Have a Dream」だけはちょっと違う

キング牧師の「I have a Dream」は、20世紀を代表するスピーチだと言われています。

キング牧師は他にも、繰り返し同じ決めゼリフを使ったスピーチを残しているのに、なぜ「I Have a Dream」はずば抜けて有名になったのでしょうか?

「I have a Dream」は1963年8月28日に、人種差別に抗議する、25万人もの人が参加したデモ行進の、最後に行われたスピーチです。桁違いのデモ活動だったから、歴史に残っているのでしょうか?

スピーチは冒頭、「奴隷解放宣言」以降も虐げられてきた黒人たちの歴史や想い、現状を述べています。ここで参加者たちは、「そうなんだ、そうなんだよ」と現状を再認識し、キング牧師と共に嘆き哀しみます。

続いて、黒人の人権を歪んだ正義から取り返さなければならない、と語っています。この時に「Now is the time」(今こそ)という決めゼリフを繰り返し使っています。

物語の序盤から必殺技を使って、共感した嘆き哀しみや怒りを増幅させています。

更に、警察からの虐待やホテルでの宿泊拒否、住む場所や学校も制限され、選挙権も無い、歪んだ正義の悪事を晒し、「We can’t be satisfide as long」(私たちは満足しない)を決めゼリフに、共感と、歪んだ正義への敵意を深めます。

そして最後に、歪んだ正義を打ち砕いた未来を「I have a Dream」と語っているのです。

「I Have a Dream」とこれまでの決めゼリフとの違いは、「I Have a Dream」の後に続く言葉が、未来への希望になっている点です。

夢がある。それはみんなが同じテーブルにつくことだ(未来への希望)

夢がある。それは平等に評価されることだ(未来への希望)

これまでのキング牧師は、決め台詞の後にグーパンチで「相手を攻撃すること」で言葉が語られていましたが、この演説だけは、決め台詞の後に「未来への希望」がくるのです。

決めゼリフが一番輝く瞬間とき

「お前はもう死んでいる」「I Have a Dream」この二つには、共通点があります。

これらの決めゼリフが炸裂するポイントは、物語の最後だという点です。

悪党どもがヒャッハー!と出てきて、悪事を働く前にケンシロウが登場し、いきなり北斗神拳で悪党を倒して「お前はもう死んでいる」と言っても、全くカッコいいと思えません。ポカーンと見てるだけでしょう。

キング牧師のスピーチを「I Have a Dream」の所から聞いても、全く感動できません。そうねえ、そうなったらいいねえ。くらいなものでしょう。

試しに「お前はもう死んでいる」「I Have a Dream」だけを切り取ってる動画と、物語やスピーチ全てを収めている動画を、見比べてみてください。

気持ちの入り方が、全く違いますから!

強い決めゼリフが強い決めゼリフとして輝くのは、その前段階で、怒りや哀しみを感じ、共感し、悪事を働く悪いやつを倒したい!という正義感が生まれなければいけません。

その悪いやつを主人公が倒して、私たちの正義感を満たしてくれた時にブチかますセリフだから、私たちは「カッコイイ」「感動した」と喜んだり、涙したりするのです。

ケンシロウもキング牧師も、その他大勢の名スピーチも、最後に感動して拍手喝采で終わります。感動的なスピーチは、最後にかっこいい決めゼリフがある、今回決めゼリフについて調べてみて、そのことを確信しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました