デザインとアートの違い【整理する情報のレベルが違う】

評論

今日はデザインとアートの違いについて話します。

デザインとアートの違いについては、ある誤解がある気がしていて、その誤解を解きたいなと思ってます。

アートとデザインってなんとなく似てるじゃないですか。似てるから、「あの人はアーティストだからねー」とデザイナーのことをアーティストと呼んだり、その逆もあります。

デザイナーのほうでは「アーティストと一緒にすんなよ!アーティストみたいな自己満足野郎と一緒にすんじゃねえよ!」みたいな感じで反発を持ったりします。

逆にアーティストに対して、「あなたは変わったデザインの絵を書くよね」とかって言う人もいます。言われたアーティストは「俺の絵はデザインじゃねー」みたい思ったりということで、実はデザイナーとアーティストってたぶん仲悪いんですよ。隣接領域にいるがゆえに、ちょっと仲悪いんです。

デザイナーとアーティストは、お互いを勘違いしている

特にデザイナーの側から見てアーティストの評価が低いのは、アーティストが単なる自己満足野郎だと思っているからだと思うんですね。

内面から湧き出てくる表現したい何かを思いのままにぶつけて、絵画にし、その絵画にたまに共感する人がいるだけだと。基本的にはアートは役に立たないが故に価値があるとかっていうふうに考えたりするんですよ。

誤解です。アートは役に立たないとか、役に立たないのをめでるとか、そういうこと言ったりするんですけど、誤解としか言えない。全然違う。

一方でアーティスト側からデザイナーはどう見えてるかというと、姑息な野郎なんですよ。綺麗な“風”な絵を書いて商売に走りやがってみたいな感じ。

ところが実はアーティストもデザイナーも両方とも商業主義にガッツリ染まっています。

しかし昔ながらの自己表現系のアーティスト(さっきデザイナーが批判したような、自己の内面をぶつければアートになるという風に信じている昔ながらのアーティスト)たちは商業主義で人にウケるような可愛い系の絵とか萌え絵とかを書いてるような奴らをちょっと馬鹿にしてたりします。

ということでアーティストとデザイナーはお互い勘違いして、お互いをディスりあうという構図になってます。

デザイナーとアーティストの違いは整理する情報のレベル

でも本当は両方とも素晴らしい仕事なんですよ。

ただやっていることは同じように絵を描くことだし、見栄えを良くすることなんですけど、やってるレベルがちょっと違うという話を今からします。

デザインは社会活動レベルの情報を整理する

デザインというのは、基本的には情報を整理することなんですよ。情報整理するってどういうことかというと、例えばソーシャルデザインという言葉があるでしょ。

デザインって“柄”をレイアウトして綺麗に見せることとかって思いがちなんだけど、ソーシャルデザインって呼ばれた瞬間に、柄とかが消し飛ぶでしょう。

デザインってそもそも“設計”っていう意味ですからね。情報を整理してわかりやすくすることにすぎないんですよ。

ソーシャルデザインは社会全体もしくはある特定の社会集団を見栄え良く、わかりやすく整理することです。

だからフォントにこだわったりとか、赤い文字入れたりとか、青い文字入れたりして見やすくすることをデザインと呼んだりするわけです。

アートは人間の根源的な深い問いに関する情報を整理する

一方でアートは、情報を整理するということにおいて、同じように整理するんですけど、レベル感が違います。

アートが情報を整理するレベルというのは、例えば、この厳しい商業主義を表現するとか、何ゆえに私たちは生きねばならないのか、みたいなことを問題設定した時に立ち現れてくる情報です。

なぜ生きなきゃいけないのかって言うと、子供がいるからとか、親がいるからとか、神様の思し召しとか、多分色んなレベルの事が同時に発生するんですよ。

このレベルの情報を一生懸命整理するとアートになっていって、デザインっていうのは、例えば最短距離で百万人都市の交通網を完璧にこなして、渋滞をゼロにするっていう理想のもとに社会を設計します。デザインするっていうのは完全にソーシャルデザインの一端なんですけど、社会レベルの情報を整理するのです。

目的が社会活動のレベルにフォーカスされているものはデザインで、より根源的魂のレベル、人間の深い問い、なぜ生まれてきたのかとか、生きて楽しいとは何かとか、そういうより深いレベルの問いに対して情報を整理するのがアートの仕事になります。

デザイナーはアーティストを、アーティストはデザイナーをリスペクトすべき

デザイナーはアーティストをリスペクトすべきです。
なぜならデザインはアート抜きに作れないからです。

例えば、イヴ・サン=ローランはモンドリアンっていうアーティストをものすごくリスペクトしていて、モンドリアン柄のドレスを作って一躍有名になったわけですよ。

つまり私たちのデザインっていうのは、アートを基盤にしないとほとんど不可能、不可能って言うと怒られちゃうけど、アートが基盤になることが多いです。

だからデザイナーはアーティストを多くの場合尊敬した方がいいと思うし、アーティストは観念的な事をやっているので、それを実現するのはデザイナーやエンジニアの仕事なんですよ。だからデザイナーやエンジニアの優れた職人の技術にもちろんリスペクトを持つべきです。

ということで二人がお互いに憎み合ってるのがなんか悲しいなと思う現実があります。ここにいる皆さんには、そういう議論に与しないようにして頂ければなと思って解説しました。

試しにアートとデザインの違いとかで検索してください。ものすごくくだらない情報があふれているのがわかっていただけるかと思います。

今日はここまでにしたいと思います。

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