イベントにおける、キャスティングのポイント【誰に何を語らせるのか】

演出(小道具、スライド)

2018年2月、筑波大学の講義に紗倉まなさんがゲストスピーカーとして登壇しました。

メディアアーティストであり本大学准教授である「現代の魔法使い」落合陽一さんの超人気講義「コンテンツ応用論」にての試みです。

会場は立ち見も含めて超満員。

男子密度も普段より高めで、学園祭的な熱気が立ち込めていたそうです。

筑波大生、うらやましいぞ!

さて、今回あなたのパブリックスピーキングでは、「誰」が「何」を話すのが適切でしょうか。

いくらあなたが素晴らしいスピーキング力をもっていたとしても、自分で話すだけがベストアンサーとは限りません。

会を盛り上げる重要な手段として、キャスティングの妙を極めていきましょう。

餅は餅屋。エロはえろ屋。

いきなりエロとは何事か。

まずはえろ屋を簡単に紹介します。

自身の職業を「えろ屋」と名乗る紗倉まなさんの正体は、超人気AV女優です。

彼女は本業の他にもエッセイや小説などで文才を発揮したり、様々なメディアやイベントで「日本人の性」に関する啓発活動を積極的に行ったりしており、ネオAV女優として活躍されています。

そこで冒頭で述べた講義です。

本講義は、AVの撮影に関する裏話から始まり、書き物を始めたきっかけ、AV女優という職業に向けられる意見を切り口として日本社会にはびこる「普通」と多様性についての議論、さらには学生の質問を受けてこれからの時代の性との向き合い方について私見を述べるという展開でした。

今を時めく超人気AV女優の話に、学生たちのみならず、こっそり覗きに来た大人たちも鼻息5割増しで講義に熱中していたことでしょう。

非常に興味深い話が聞けたはず。うらやましい筑波大生。

さて、これを落合陽一さんが1人で話していたらどうでしょうか。

落合陽一さんはアーティスト×研究者×経営者×教育者×父親ということで、非常に幅広い見識をお持ちです。

出演しているネット番組ではエロに関する事もさらっと話しています。

ですが、彼がエロいことを話していてもあまりエロさを感じないのはなぜでしょうか。

研究対象としてのエロが前面に出すぎるからかもしれません。

もし彼がこの講義で自分のセックスの話をしても、男子大学生のエロに対する需要にこたえることは出来ないでしょう。

カワイイAV女優の紗倉まなさんが語る、女性の視点から見た性の話は、男子諸君の性に対する探究心や好奇心をくすぐることでしょう。

また、女子から見ても、プロとして性に向き合う先輩の考え方は気になるはずです。

つまり、エロはえろ屋に話してもらおう。ということです。


その道で生きている方をゲストスピーカーとして呼び、その人の口から聴き手に伝えることが、自分で長々と詳細に話すよりも大きな意味をもちます

誰の速攻アタックが効きそうか

次はCMの例で考えてみます。

毎年CM王&CM女王のランキングが発表され、CMのキャスティングが大きな影響力をもつというのは周知の事実でしょう。

なかでも嵐の人気は絶大です。

世間がどんな人たちに好印象を持つのか、CMを見れば一目瞭然となります。

風邪薬ルルアタックのCMでは、嵐のセクシー担当、MJこと松本潤さんがアクロバットな動きから「速攻アタック!!」と言って光る輪っかを飛ばしてきます。

なんかかっこいいし、魔法のように治りそうな気がしてしまう女性は少なくないはずです。

(なんか治りそう。たぶん治る気がする。いや、絶対治る。)

これがもし温水洋一さんや蛭子能収さんだったとしましょう。

この御二方、私は好きです。

好きなんですが、この人たちに「速攻アタック!!」と言われてもむしろそのアタックはかわしたいところです。

アタックされても風邪が治るどころかもっとおかしくなってしまう気がします。

温水洋一さんや蛭子能収さんであれば、中年世代のスマホのCMやパチスロのCMあたりがいいかもしれません。

万が一彼らに栄養ドリンクのCMが回ってくるのであれば、蝶野正洋さんあたりに頭を下げて友情出演してもらいハッスル感を出しましょう。

蛭子さんに栄養ドリンクを勧められても、気合が入る前に和んでしまいます。

同じことを言うにしても、キャスティング次第で伝わる印象が大きく変わります。

打ち出したいイメージや、伝えたい事柄のターゲットはどんな人々かに応じてキャスティングを変化させなければいけません。

目には目を。歯には歯を。

結論から述べます。

男性向けのものには男性を、女性向けのものには女性を、若者には若者を、シニアにはシニアを。そう、目には目を、歯には歯を、です。

あれ、こういう意味で良かったんでしたっけ?

「ジャーパネットジャーパネット、ゆめのジャパネットたかた~」

テレビ通販番組の代表格、ジャパネットたかたを例に見ていきましょう。

長崎訛りの甲高い語り口で知られる高田(元)社長の印象が強烈です。

高田さんの声にはイヌにとって聞き取りやすい周波数が含まれており、イヌに友達だと思われたという研究結果があるほどで、ジャパネットの番組といえば「あの人」と思われがちです。

ですが実際のところ、高田さんの独壇場というわけではありません。紹介する商品によって、うまく役割分担がされているのです。

パソコンのような電子機器はネクタイをした男性が、家庭用調理器具や掃除機などはエプロンを着た女性が紹介しています。

これは、男性は男性に、女性には女性に自分を重ね合わせて共感しやすいという心理に基づき仕込まれた妙です。目には目を、歯には歯をというのは共感を勝ち取るためにとても有効と言えます。

役割分担を考えるとき、性差や年齢の他にも、どの役職の人間が話すのかも考慮しましょう。

会社のビジョンを話すのはリーダーである社長が適しています。

事業内容は部長が。お客様の様子は現場を良く知る営業が。テクニカルなことはエンジニアが。

このように役割分担して話すことでそれぞれのセルフイメージが打ち出されてステージが彩られます。

話したがりの社長が一人で全てを話をするとなると、強いリーダーシップを演出できる可能性もありますが、ワンマン経営という印象を与えかねません。

逆に話すのが苦手だからといってあまり出番がなかったり原稿の棒読みだったりすると頼りない印象を与えてしまいます。

上記は一例に過ぎませんが、話し手の性別や年齢、役職などによって同じ内容でも聴き手の受ける印象は大きく変わるということを覚えておきましょう。

そう、大事なのは役割分担です。

まとめ

最後はシェイクスピアの名作「ハムレット」の名言から締めの一言といきましょう。

キャスティングは、

自分で話すべきか、誰かが話すべきか。それが問題だ。

適任は誰なのか、よくよく考えてみましょう。

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