スピーチにおける上手な小道具の使い方【Appleの印象的な演出に学ぶ】

演出(小道具、スライド)

スピーチの原稿よりも、壇上での話し方よりも、考えるべき大切なことがあります。

それは、スピーチをより印象付ける「演出」です。

今回は、演出一つで反応が全く変わってしまった例をご紹介しながら、演出の大切さについてお話したいと思います。

小難しい講義も、「演出」次第?!

ボクは製薬会社の基礎研究員で、20年以上も研究一筋で来ました。しかし今は、ある理系の大学で教壇に立って栄養学を教えています。

そんなわけで、「我々ヒトは食べた物からできている」んだから、「薬」に頼るんじゃなくて「日々の食事」からの健康が大切ですと、結構な手の平返しの授業をしています。

その授業が、実は大問題になりました。最初の年、1回目の講義に50人近く学生さんが出席してくれたのですが、2回目の講義に来た学生さん、なんと13人だけでした。

最初はちょっと遅れて来ているだけかと思ったのですが、最後まで全然増えません。授業が終わって教務に問い合わせたら、みんなドロップアウトしていました。ショックを通り越して笑ってしまいました。

難しい専門用語を使わずに、これ以上ないってくらいに噛み砕いて説明したつもりでしたが、噛み砕いた分、長い説明になってしまって相当クドかったのかもしれません。

バリバリの理系の内容で、敬遠されたのかもしれません。

真相はヤブの中です…

しかしこの失敗からボクは学び、立ち上がらなければなりません。

次年度の講義で、今度は10分の1という記録を叩き出すわけには行きません。

薬じゃなく、食事で社会を支えるという尊い理念を伝えることは、ボクの使命です。

負けてはなりません。

そこで、ある工夫をして授業に臨みました。

その結果、学生数が増えるということはありませんでしたが、殆ど減らない程度の人気を集めることができました。

さて、 何をしたか、です。

今回は授業中に、ある絵本を回覧させました。

実は、前の年は、その絵本の挿絵をスライドにコピーして講義をしました。

おそらくその講義は、ボクのあふれる情熱でみんなうざかったのでしょう。

ボクの熱い溢れる思いは、きっと絵本には無用のものです。ボクは反省しました。

そこでボクは、ボクの解釈の余地を与えないため、いや情熱を排除するために、直接学生さんに絵本に触れていただきました。

すると、自然と意味のある雑談が教室中で起こりました。

「わ〜この絵かわい〜」「ふ〜ん、これって!」みたいに盛り上がりました。

絵本を授業に持ち込んだことで、この講義は難しそうだけどなんとなくゆるいところもあって面白く教えてもらえそう、と学生さんに感じさせられたんじゃないかと思います。

同じ講義内容でも、ボクが情熱を持って語るのと語らずに絵本に語りかけてもらうのでは、圧倒的に後者の方が優れていることが、数字によって立証できてます。

話すことよりも大切なことがあるんです! そう演出です。

世界レベルの超一流演出!

もう一つ、世界レベルのものすごい「演出」をご紹介します。

今は亡き元Apple CEOのスティーブ・ジョブズが行なった、Macbook Airの発売発表のスピーチ・パフォーマンスです。

2008年頃のアメリカのPC環境は、AppleよりもWindowsが優勢でした。

Appleは社運をかけ、少し前から iPhoneなどの新製品を次々と発表し続けて形勢逆転を目論んでいました。

スピーチ開始早々、ジョブズはコカコーラvs ペプシ よろしく比較広告をぶち込みます。

新製品 Air は、他社の最先端製品より薄いノートPCなんだけれども、コンピューターとしての機能はとっても優れているんだぞと言い切ります。

さらに、スライドを上手く使って聴衆を引き込みます。

大きなスライドの中では、ジョブズ自身もひとつのアイコンのようにしっくりハマってます。ジョブズの動きに合わせて、スライドも変わります。

でも、いつまでたっても新製品 Air そのものは現れません。

スライドの中でも、単なる灰色の四角の薄っぺらい図形でしかないんです。

「いい加減見せてよ、本物の Air を」と誰もが思い始めた頃、スライドにはなんの変哲も無い茶封筒が映し出されます。

次の瞬間、ジョブズは隅の演台に無造作に置かれてあった茶封筒を取りに行きます。

ステージ中央に戻ってきて、その茶封筒から何気なく新製品 Air をスーっと取り出します 。

そしてラップトップを開き、ベテランのウェイターがやるように開いた片手指の上に軽々と乗っけてみせたんです。

聴衆はやんややんやの大喝采です!

茶封筒からまるで紙のよう取り出すなんて、なんて薄いんだ !!
そうか、空気のように軽いんだ !!
なんて憎たらしい演出なんだ !!
(もしかして、この演出がやりたくて Air をつくったのかも…)

用意周到な「演出」により、「話のうまい」ジョブズのスピーチに圧倒的なインパクトが加わりました。

この「演出」はたった10秒ほどですが、とても「絵になる」ニュース動画として世界中のメディアに取り上げられました。広告料に換算すれば数百億円の価値があったでしょう。 

この新製品 Air とその前の年に発表したiPhone によって、AppleはPCのモバイル化という戦略に大きく舵を切りました。

茶封筒は「空気のようなPC = モバイル化」を表現していた演出でもあり、会社の命運を賭けた新戦略のアイコンでもあり、Windowsの牙城を崩して華々しく復活して行くAppleのターニング・ポイントでもあったのです。

まとめ

「演出」一つでスピーチ内容をより強く印象付けたり、話していることを代弁したりすることさえあるんです。

原稿を書いたり、話し方や発声のトレーニングをしたりするのはもちろん大切です。

それ以上に、色んな角度から「演出」を考えるってことはとても大切だってこと、わかっていただけましたか?

コメント

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